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が、これはこの管理区においてマツモムシ、ヒメアメンボののべ個体数が特に多かったためと考えられる。この管理区の個体数の6月下旬のピークはヒメアメンボのピークと、9月中旬から11月上旬にかけてのピークはマツモムシのピークと、それぞれ一致した。これはこの区では、日照時間が長いため水温も高く、また除草区であるため開水面が広かったためと考えられる。
深水・放置区と深水・除草区を合わせて深水区とすると、この区ではオニヤンマ、マルバネトビケラが集中して見られた。オニヤンマの幼虫は、水底の砂泥の中や落ち葉などの植物性沈積物の下にひそんで生活し(石田ら,1989)、マルバネトビケラの幼虫は、植物片・砂粒などからなる粗雑な外観の巣をつくる(川合ら,1985)ことから、この両区の底質がこれらの昆虫の分布に影響を与えたと考えられる。
浅水・放置区は確認のべ個体数が最も少ない管理区であったが、これはこの区が最も日照時間が短かく、水温が低かったためと考えられる。しかし、この管理区の優占5種にミズカマキリが含まれたのは特徴的であったが、この管理区にこの種にとって好的な環境が存在したためと考えられる。
浅水・除草区は、調査開始初期の種数は4区において最も少なかったが、9月上旬からは種数が最も多く、平均多様度は最も高くなった。これは、9月上旬以降にヒメゲンゴロウ、コシマゲンゴロウ、シマゲンゴロウ、ガムシ、ヒメガムシ等のコウチュウ目がこの区に集中的に見られたためである。特に、シマゲンゴロウとコシマゲンゴロウについては、この管理区でのみ確認された。このことは、この2種が特定の環境を示す指標生物として利用できる可能性を示唆するものと言える。シマゲンゴロウは、本州でも都市近郊では激減し、近郊の里山的な環境でしか見られなくなったという(森ら,1993)。この種が出現したということは、本調査地が良好な

 

 

 

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